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世界中の本好きのために

相原孝夫

Profile

1965年生まれ。早稲田大学大学院社会科学研究科博士前期課程修了。マーサージャパン株式会社代表取締役副社長を経て、現職。人材の評価・選抜・育成および組織開発に関わる企業支援を専門とする。経営アカデミー(日本生産性本部)、日経ビジネススクール、早稲田大学エクステンションセンターでの講座ほか、講演を多数行う。 著書に『20代のあなたに、会社が期待していること』(ダイヤモンド社)、『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか』(幻冬舎新書)、『会社人生は「評判」で決まる』(日経プレミアシリーズ)、『360度フィードバック―チームを活性化し人材を育てる』(日本経済新聞出版社)など。

Book Information

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培ってきたものすべてを、
企業と企業で働く個人のために役立てたい



マーサージャパン代表取締役副社長を経て、2006年にHRアドバンテージを設立された相原さんは、人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わる企業支援を専門とされており、「仕事を通して成長できる場づくりを支援する」ということをモットーに企業支援をしていらっしゃいます。著書には、『会社人生は「評判」で決まる』『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか』『図解戦略人材マネジメント』などがあり、今年1月には『20代のあなたに、会社が期待していること』を刊行しました。今回は、コンサルティングとの出会い、お仕事への思い、また今後の展望などをお聞きしました。

人や組織の可視化に特化したコンサルティングを


――代表を務められるHRアドバンテージでは、主にどのようなお仕事をされているのでしょうか?


相原孝夫氏: 人事組織コンサルティングという仕事になりますが、私共のメンバーは全て、マーサーというアメリカの人事コンサルティング会社の出身です。人事組織コンサルティング会社は主として、評価制度や報酬制度などの人事制度の設計・再構築を手掛けますが、弊社では人や組織の可視化(見える化)を中心に支援しています。Webツールをいくつか保有していて、それにより人材や職場状況を可視化し、それを分析してフィードバックし、人材能力や職場力の維持、向上につなげることに力を注いでいます。
人事の世界はここ10~20年あまり変わり映えしていません。企業では人事制度を見直してみたり、教育研修を繰り返し実施してみたりしますが、それらの打ち手がはたして正しいのかどうか。「勘と経験による人事」などということも言われますが、経営者あるいは人事部の方々の思い込みによる打ち手により、状況が悪くなる場合もあります。ですから、実際にはどういう問題が絡み合っていて、どういう優先順位でどのような手立てを打つのが良いのかということを明確にするためには、まずは現状がどうなっているかを正確に把握することが重要で、可視化することが必要なのです。その可視化に特化したコンサルティングをするために2006年にHRアドバンテージを立ち上げました。

――ご自分の名前でお仕事をされているわけですが、昔から人の上に立って仕事をしたいという思いはあったのでしょうか?


相原孝夫氏: 漠然とした思いはありましたね。子供の頃は野球少年で、友達と公園に集まって野球ばかりしていましたので、その頃の夢はご他聞に漏れずといいますか、プロ野球選手でした。コンサルタントということは、学生時代は全く考えていませんでしたが、中学校の頃には「自分で会社をやる」ということは決めていました。

――「自分で会社をやる」と決めたきっかけは、どのようなことだったのでしょうか?


相原孝夫氏: 家業がありまして、うどんやそばの乾麺を製造、販売する会社を祖父がつくって、父が継いでいました。コンサルタントの立場で今考えてみれば、贈答品市場など、生き延びる道は色々あったと思います。でも「将来性の薄い事業かな」などとその頃は思ってしまい、また自分が商売には向いていないようにも思い、中学2年ぐらいの時に「後は継がない」と父に言ったんです。

祖父のつくった会社を、超えるような会社を


――「継がない」と宣言したことに対して、反対はされませんでしたか?


相原孝夫氏: されませんでした。その後徐々に会社を縮小していって、10年後くらいに会社を閉じることになりました。祖父はどちらかというと事業家肌で、父は職人的というか技術者的というか、自分で色々と研究をして半生麺のようなものを開発したりしていました。タイプは違っても、商売人の道です。自分には商売人は向いていないかなと思ったんです。でも祖父を強く尊敬していましたし、継がないということは、祖父がつくって父が継いだ会社を潰してしまうことになるので、「自分でもその会社を越えるような会社を作らないといけないな」と漠然と思ったわけです。中学の頃に祖父に「なぜうどん屋を始めたのか?」と聞いたことがありました。すると、「他の人たちと同じことをやっていてもつまらないだろ」という答えが返ってきたのです。宇都宮近辺は小麦が採れる土地柄だったので、各家庭でうどんのような形にして食べたりするのは風習としてあったようなのですが、祖父はそれを乾麺という保存の利く形にして販売するという、他の人とは違うことを始めたのです。その時の祖父との会話は、私が「他の人と違うことをやっていきたい」というポリシーともいえる考え方を形成するきっかけとなりました。

仕事においても偶然性が大事


――学習塾でもお仕事をされていたとお聞きしましたが、それはどういった経緯だったのでしょうか?


相原孝夫氏: 私が大学を卒業した時代はバブル真っ只中でした。商学部だったので、友人の7、8割ぐらいは、都銀や生損保、証券などの金融系や商社などに就職しました。行きたいところへ逆指名をするような形で就職していく先輩たちを見て、大学を卒業してまたどこかへ入学していくようなイメージを持ってしまい、「なにか違う」と思ったんです。「他の人と違うことを」という志向性がここで出てしまったんです。その頃、高校、大学の先輩が学習塾を首都圏でかなり手広くしていて、在学中から手伝いをしていたんです。その仕事が「まだ中途半端だな」という気がしていて、卒業してからも準社員という形で1年半くらいそのまま続けていました。

――その学習塾では、どのようなお仕事をされていたのでしょうか?


相原孝夫氏: 個人指導塾の走りでしたね。最初は塾講師のアルバイトで採用され、それから教室長。それから次にどこに教室を出すかといったマーケティング的なことにも関わっていきました。私の場合は、比較的新しいことや、責任の重たいことなどをやりたがる方なので、どの仕事も楽しかったのです。
今回の『20代のあなたに、会社が期待していること』にも書いていますが、目の前の仕事を大事にして、とにかく没頭してやること。人との出会いもそうですが、仕事との出会いも偶然性が大きいです。「キャリアの8割は予想外の偶然で決まる」といったクランボルツの「Planned Happenstance Theory(計画的偶発性理論)」にもあるように、偶然舞い込んできた仕事でも一生懸命やってみるのは楽しいし、そこから次の展開が見えてきたりもするのです。

――新しいもの、未知の世界に踏み出すことができるのはなぜなのでしょうか?


相原孝夫氏: 去年出した『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか』では「モチベーション0.0」などと書いていますが、やる前からモチベーションが上がるというよりは、やりながらそのプロセスの中でその面白みや意味合いも分かるようになって、徐々にやる気が出てくるという感じだと思っています。ですから、どんなことでもやる前から選り好みせずに、まずはやってみようと思っています。よく言われるとおり、「楽しい仕事やつまらない仕事があるわけじゃなくて、楽しい仕事の仕方、つまらない仕事の仕方があるだけだ」ということだと思います。どんな仕事にも意味はあるし、何かの役に立っている。だから単に楽しみを見つけようと思ってやっているのとは少し違います。

コンサルティングに、「これだ!」というインスピレーションを得た


――その後、コンサルティングの道へと進まれるわけですが、コンサルティングとの出会いはどのようなものだったのでしょうか?


相原孝夫氏: 学習塾での仕事が一段落し、「さて次に何をやろうかな」と考えて半年間くらい何もしない時期がありました。「自分はプータローの走りだ」なんて、そのような状況にある若い人たちには自慢げに言ったりもしますが、でもある時、新聞の死亡欄の氏名のあとに(無職)と書いてあるのを見た時に、今死んだらこのように書かれてしまうのだと思い、ゾッとしました。「無職のまま死にたくはない」と思い、それからは横断歩道を渡る時など相当気をつけていました(笑)。それで本格的に再就職活動を始めたのですが、コンサルティングという仕事があることを偶然知りました。その頃は、ほんの数社の日本の会社のほか、外資系のいくつかの会社がようやく日本での活動を始めたころで、ほとんど知られていない業種でした。「他の会社に経営のアドバイスをするというのは、どのような仕事なのだろう?」と思いましたが、「色々な会社を内側から見ることができる」という話を聞き、「この仕事だ!」と思いました。将来自分が起業するにあたって、どんな仕事をするかを考えるのに絶好の仕事だと思ったのです。そこで、主に中堅・中小企業のコンサルティングをやっている日本のコンサルティング会社に中途で入りました。それがコンサルティングと私の出会いでした。

――コンサルティングのお仕事の魅力とはなんでしょうか?


相原孝夫氏: 20代の私が経営者と直接お話をすることができましたし、専門的な見地から役に立つ情報をお話しすれば、若造の言うことでもきちんと聞いてもらえるといった楽しさ、魅力がありました。ただ、どんな仕事も同じかもしれませんが、常に膨大な作業量をこなさなければなりませんでした。中には意味がよく分からない作業もありましたし、そういった面での辛さというのはありましたが、おおむね楽しかったです。体力には比較的自信があったので人一倍仕事量はこなすことができました。人よりたくさん仕事をすれば学ぶことも多いであろうとも思っていたのです。その頃の上司から言われたことで今も私の心に残っているのは、「20代を楽に過ごしてしまったら、先は無いよ」ということ。つまり、20代に死ぬほど働いて初めて、30歳以降のキャリアが開けるということなのです。だから20代は辛くいこうと決めました。素直だったのです(笑)。

――社会人になってから本を読み出したということでしたが、どのようなことがきっかけだったのでしょうか?


相原孝夫氏: 学生の頃は本当に本を読みませんでしたので、読書を始めたのは20代後半からといってもいいくらいです。まずは、経営者ときちんと話をするために本を読むようになりました。コンサルタントの仕事をしている人は皆似たような感じだと思いますが、ある業種のクライアントを得た場合、その業種に関する本を10冊程度読み漁って、土地勘を付けてから仕事に臨むんです。それで、ビジネス書の類いを読むようになりました。また、経営者の方々と話してみると歴史好きな方が多く、中小企業の社長さんの中には文学好きな人もいて、読書家が多い。そういう人との話が成り立つように、いろんなジャンルの本を読むようになっていきました。仕事上、必要に迫られてという本はたいてい斜め読みで一気に読みますが、良い本であればあるほど、少し読んでは色々と考えるので、読むのに時間がかかります。自宅を5年ぐらい前に実家のある宇都宮に移しましたので、週に2、3回は東京と宇都宮間を往復していますが、新幹線の片道は1時間弱かかります。その移動時間は本を読むことが多いですが、1時間で2、3ページしか進まないということもよくあります。

――ビジネス書と小説では読むスピードは違ったりしますか?


相原孝夫氏: ビジネス書に関しては、書いてあることを吸収しようというよりは、「何かインスピレーションを得て考える材料にしよう」という思考で読んでいます。小説に関しては単純に楽しんで読んでいますので、速い時は自宅と会社との往復で1冊くらい読んだりもしますが、ビジネス書を読むのは概して遅いですね。

人事の分野を極めるために、マーサーへ


――その後、マーサーに入ろうと思われたのはなぜだったのでしょうか?


相原孝夫氏: 中堅・中小企業相手に戦略や商品開発や人事など、色々なコンサルティングをやっていたのですが、たまたま人事に関する案件を多くやるようになり、なんとなくその会社の中でも人事の専門というような感じになっていきました。それならば、もう少し人事の分野を極めようと思い、マーサーという人事専門の世界的なコンサルティング会社に移ることにしたのです。

――本を書こうと思ったのは、いつ頃でしょうか?


相原孝夫氏: マーサーに入ってからです。いちばん最初に、この『図解戦略人材マネジメント』を書きました。マーサーの日本における認知度を高めるために書いたという部分が大きかったです。その頃の外資系の人事系コンサルティング会社はほとんど外資系企業だけを支援していたので、本当に認知度が低かったんです。その中でも3番手か4番手という認知度の低さでした。今後、日本企業にも進出していきたいと思っていたので、とにかく人事系コンサルティング会社の中では一番認知度が高くなるようにしたかったのです。広告をバンバン出す予算も無いし、日本においてはやっぱり活字が強いので、「出版だろう」という結論に達しました。その頃は出版社さんとのお付き合いが全く無く、メールも無かった時代でしたので、出版社10社くらいに「本を出させてください」という企画書をFAXで送りました。ダメ元です。運よくその中の1社、東洋経済新報社の当時の編集局長の方が「面白そうなのでうちから出しましょう」と言ってくださり、本ができあがりました。そういう経緯がありますので、最近はお付き合いはないものの、東洋経済さんには足を向けて寝られないという思いが未だにあります(笑)。



――認知度が高まってから作られた本は、相原さんの中で違った意味合いがあるのでしょうか?


相原孝夫氏: その本が幸いにも結構売れまして、会社の認知度がグッと上がっていきました。それで私の中で本を書くということは一段落したのですが、90年代後半から日本でも広く普及し始めた「コンピテンシー」について、ある大学の先生からのご紹介で、日本経済新聞社(現、日本経済新聞出版社)さんから依頼がありました。ちょうどその頃は2年程シンガポールで単身赴任をしていて夜も時間があったので、書き始めることにしたんです。それが2001年で、ちょうどコンピテンシーが日本企業で一巡していた頃でもあったので、「コンピテンシー」を専門としてきた自分としても「いったん取り纏めておきたいな」という思いもありました。2009年に出した『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』は、弊社で多く支援している「360度フィードバック」という手法に関しても、あまり教科書的に使えるものが無かったので、「じゃあ自分たちで書こう」ということで書いたもので、ここまでの本は仕事そのものという感じです。

――その後、路線変更はありましたか?


相原孝夫氏: 路線が変わってきたのは、『会社人生は「評判」で決まる』という本からです。評判ということについて色々と興味を持ってきていました。企業の中では、「所詮人事は、評価より評判だ」ということをよく言われるのですが、私はずっと評価ということを専門にしてきたこともあって、そういった言われ方は少し不本意でもあったんです。ただ、「評価より評判だ」と言われるほど大きな影響力を持つ「評判とはなんだろう?」と思い、本や文献をあたってみたのですが、ほとんど情報がなかったのです。「コーポレート・レピュテーション」という企業の評判について書かれたものは、特にアメリカで多く発表されているものの、個人の評判となるとほとんどないのです。であるならば、自分で書いてみようと思ったわけです。

どんな人にも分かりやすく、役に立つものを書きたい


――本を書く時に、気を付けていることはありますか?


相原孝夫氏: 今回の、『20代のあなたに、会社が期待していること』に関しては、編集者の方が「分かりやすさ」を重視した本作りに長けている方で、彼の力に依るところが大きかったと思います。私自身、難しいことを難しいまま理解するのが苦手なので、分かりやすく書こうと思いながら書いています。分解してみたり、何かに喩えてみたりして、自分として十分に腹落ちするくらいまで理解したことを書いているので、読者の方にも伝わりやすくなっているであろうとは思っています。

――どういう思いで本を書かれていますか?


相原孝夫氏: 『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』まではビジネス目的なので、人事の方々に役に立つ情報を提供しようということを考えていました。でも、『会社人生は「評判」で決まる』からは一般読者を対象にしていますので書き方が根本的に違います。一言で言えば、万人ウケを考えています。たとえば、セミナーなどで話をすることは多いのですが、セミナーの場合、受講された方の80%の人が「まぁまぁ良かったね」と思うようなセミナーをやっても、まったく仕事には結び付きません。半分の人が「良くなかった」と言っても、5%の人に「すごく良かった」と言ってもらえるような、少数に刺さるセミナーであって初めて仕事になるという側面があります。だからセミナーの場合は、あえて極端に強いメッセージを発することも多いわけですが、一般の読者向けに何か書く場合にはそれとはまったく逆の発想となります。8割の方、できればほぼ全員の方に「良かった」「まぁまぁ良かった」と思ってもらいたいのです。自分のお金を出して買ってくれるわけなので、「ガッカリさせてしまっては申し訳ない」という思いが強いからです。だから、どのような人が読んでも「役に立った」と思えるような内容がいくつかないといけない。去年出した『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか』は、その点が難しかった。1、2章には軽めの内容を書いて、5、6章は重たい内容を書くといったように章で区別して、どの年代のどういう知識レベルの人が読んでも、いずれかは良かったと思ってもらえるように、そういう構成で書きました。

――なぜ読者の対象を広げようと思われたのでしょうか?


相原孝夫氏: きっかけは「評判」について書いた本ですが、その本を出した後に、これまでとは比較にならないほど多くの方々から、その本に関するフィードバックをいただくことができたのです。その多くは、リップサービスもあってのことと思いますが、「これまで漠然と思っていたことが鮮明に理解できた」というような類のものです。中には、いろいろと持論をお話しくださる方などもいます。その本を書いたおかげで、「評判」ということに関して多くの方々と意見交換する機会が得られたのです。このように、仕事に関する本とは比較にならないほど、多くの反応や機会がいただけるということは、一般読者向けに本を書くことの醍醐味だと思います。

――お仕事をされている中で、早稲田大学の大学院に入られるわけですが、再び学ぼうと思われたのはなぜだったのでしょうか?


相原孝夫氏: それまであまり勉強や読書をしてこなかったという反省もあり、特に歴史や哲学などに関して改めて学んでみたいと思ったのが1つあります。あとは、人事組織コンサルということで、仕事上、企業の中だけを見て対応しがちなのですが、企業の中で起こっている問題というのは、実は企業の中だけを見ていても解決しないことが多いものです。社会思想なども深く関わってきます。そういうこともあり、より視野を広く持ちたいということで、社会学を学ぼうと思ったんです。加えて、これまで専門としてきた人事組織以外にもう1つ、「自分の専門といえる分野が欲しい」という思いもありました。

「お客様」のニーズを汲み取る


――ハイパフォーマーのインタビューをされていらっしゃるそうですね。


相原孝夫氏: はい。これは本当にありがたい仕事で、様々な業種の様々な職種の優秀な方々に会えますし、インタビューをしている側としてもとても学びが大きいんです。出版社の編集者の方々も、「いろんな分野の専門家の方と一緒に仕事ができて楽しい」ということをよく言われますが、それと同じような感じです。

――相原さんにとって、編集者の存在、役割はどのようなところにあると思われますか?


相原孝夫氏: 読者と著者を繋ぐという役割だと思います。書いた本がどうすればより多くの読者の方々に手に取っていただけるか、端的に言えば、より多く売れるか、ということに関しては、自分の専門ではないということは分かっていますので、たいていは本のタイトル付けも含め、そのあたりのことはすべて編集者の方にお任せしています。編集方針に関しても、できるだけ口出しをしないようにしようと思っています。著者にとってはもちろん読者がエンドユーザーですが、編集者も顧客というかバイヤーのような存在だと思っていますので、本として出す以上は編集者のニーズを汲み取って、それを満たしていくこと考えなければいけないと考えています。自分では当初違和感があっても、編集者の方針に沿って書いていくと新たな発見があったり、勉強になることも実に多いです。

――編集者とのやり取りの結果、本が良いものになるのですね。


相原孝夫氏: そのやり取りも結構面白いです。『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか』の当初のタイトル案は『モチベーションは要らない』だったのですが、編集者の方から提案されたのです。私共は、企業に対して「モチベーションマネジメント」の支援を生業にしているくらいなので、「そういうテーマをよく私のところに持ってきたものだな」と妙に感心してしまいました。あまりに感心してしまったことが一因で結局書くことになったのですが、実際に書いてみると「モチベーション」ということに関してこれまで考えたことがなかった裏側にある新たな側面なども見えてきて、すごく面白かった。その後、「20代の若手社員向けに」というのもやはり編集者案でしたが、書いてみてやっぱり楽しかったです。私も専門性を追求している立場なので、企業人事に関してはある程度の自信を持っています。編集者に会ってみて「この人はしっかりした考えを持っている」とか「一緒に仕事をしてみたいな」と思った方と本作りをするようにしています。「自分とは違う分野の専門家」として編集者を頼りにしています。ハイパフォーマー分析もそうなのですが、優秀な人、何かしらの思いや誇りを持って仕事をしている人と仕事をするのは、学びもあるし楽しいです。

執筆のプロセスは、自己発見のプロセスそのもの


――相原さんにとって、本作りは楽しい部分が大きいのでしょうか?


相原孝夫氏: 職業作家であれば楽しいばかりではないでしょうけど、私の場合は仕事そのものではなく、趣味に近い活動なので楽しんでいます。あるテーマについて書き始めると、四六時中そのテーマのことを考えるというプロセスも楽しいものです。そうすると、それまで頭の中で散らかっていた色々なことがまとまってきて、文字にしてみると「自分はこういう点についてはこういう思考が強いんだな」などといったこと分かってきます。執筆のプロセスというのは、言うなれば自己発見のプロセスそのものではないだろうかという思いが、最近の2冊を書く間に強くなりました。

――電子書籍に関してはどのようにお考えでしょうか?


相原孝夫氏: 今年出した『20代のあなたに、会社が期待していること』もすでに電子化されていますが、私自身はアナログ人間だからなのか、紙が好きなのか、今のところ電子書籍は使っていません。でも、後から見返したりする時に、「便利そうだな」と最近思うようになりました。本を書く時なども、結構多くの本を参照するわけですが、いちいち引っくり返して参照箇所を探すのは骨が折れます。電子書籍ならば、たくさんの本が入っているわけですし、検索ができるのならたいへん助けになると思います。そういう意味で本を書く人に限らず、研究者や学生なども含めて今後のニーズは大きいだろうなと思います。

――今後の活動についてお聞かせ下さい。


相原孝夫氏: 仕事面では今は大手企業を中心に支援をしていますが、もっと全体が見える中堅・中小企業を対象にした方が支援内容のインパクト、役立ちが大きいということもありますので、将来的には中堅・中小へも拡げていきたいと思っています。私個人としては、将来的な希望は2つあります。一つは現在の仕事の延長線上で、60歳ですとか一定年齢を過ぎたら、会社とは別に個人的にボランティアベースでいくつかの企業に関わっていきたいと思っています。商売としてではなく、一個人の活動として可能なあらゆる支援をし、役立つことができて重宝されるようになれたら、それはこういう仕事をしてきた者として本望だと思います。
もう一つは、個人の方、具体的には会社員の方々を対象とした「人事リテラシー」の啓蒙や教育です。たとえば、人事組織コンサルとして関わって企業の人事制度を再構築したとし、それで意図した変革が完了するわけではありません。どんな制度も施策も、現場のリーダーの人たちがきちんと運用してはじめて機能するわけです。しかし、ここが一番難しい。たとえば、「評価者研修をいくらやっても、きちんとした評価ができるようにならない」ということは、企業の人事部の方々がよく言われることですが、それは「人事リテラシー」が備わっていないからです。耕していない土地に種を蒔いても育たないのと同じで、「人事リテラシー」という土壌がないところにいくら教育研修を投入したところで身に付くはずはありません。これまでの企業支援とは若干路線を異にしますが、なんとか機会をつくってそうした方向性を強めていきたいと思っています。今後書いていく本も、多くはこの路線に沿ったものになると思います。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 相原孝夫

この著者のタグ: 『コンサルタント』 『コンサルティング』 『考え方』 『生き方』

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