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世界中の本好きのために

下川裕治

Profile

1954年(昭和29年)、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『新書 沖縄読本』 (講談社現代新書) 、『「生き場」を探す日本人』 (平凡社新書) 『アジアでハローワーク』ぱる出版、世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア横断2万キロ (新潮文庫)、旅行者に人気の『歩くガイドシリーズ』(メディアポルタ)など。最新著書 『「生きづらい日本人」を捨てる』 が12月に発刊予定。

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紙でも電子でも「圧倒的に面白いもの」を作らなくては



旅行作家である下川裕治さんは、すでに学生時代から「慶應義塾新聞」などに旅行記やエッセイを発表されています。大学を卒業後は産経新聞の記者を経てフリーランスに。バスや列車を乗り継ぐバックパッカースタイルでの旅を書き続け、人気を博しています。そんな下川さんに、電子書籍の在り方やご自身の執筆スタイルなどを伺いました。

メインの仕事は「歩く」シリーズの取材と個人的な取材



下川裕治氏: 僕って2つ仕事があるんですよ。『歩くガイドシリーズ』(メディアポルタ刊)の監修と、自分自身の取材ですね。仕事が常にダブっているんですね。『歩くガイドシリーズ』は現地のスタッフの人に作ってもらっているので、その原稿を見てチェックするという仕事。あとは個人的なほうの仕事になると、次に出す本の準備の取材になります。

――旅先で執筆などはされますか?


下川裕治氏: いや、しないです。追われていればしますけど、そんなにできないですね。ただ、逆に書けなくなったとき、外国へ執筆のために行くことはありますけどね、こもっちゃうというか(笑)。

――ここ最近で書くために行かれたところはございますか?


下川裕治氏: 今年の2月に1週間カンボジアのシュムリアップにいましたね、どこも出ずに(笑)。海外でこもるときは、朝起きて、宿の近くの屋台でコーヒーとパンを食べて、部屋で昼まで原稿を書いて、その辺の屋台行ってお昼を食べて、また帰ってきて部屋でずっといる。日本人の知り合いがいるところへ行って夕飯がてらちょっとビールでも飲んで1、2時間で帰ってくるというような生活が毎日続くときもあります。

――今更お聞きすることじゃないかもしれないですが、年間どれくらい日本に滞在されているのですか?


下川裕治氏: そんなに海外へは行っていないですよ。多分、月に2回くらい出ると思っていただければいいと思います。それで1回が3、4日滞在のときもあるし、1週間から2週間ぐらいのときもある。だから日本にいるほうが多いですね。

電子でも紙でも面白いと思うことは同じ


――ご自身は旅先で書籍を読まれますか?


下川裕治氏: ありますよ。ありますというか、正直なところを言うと書評を書いてくれとかいっぱい送られてくるわけですね。そういうのに追われて読んでいるというほうが実は多い(笑)。でも、個人的にいつも必ずカバンの中に入っている本はあります。金子光晴の『マレー蘭印紀行』(中公文庫)というのは、ここ10年ぐらいはいつも持ち歩いているような気がします。必ず1日1回読み返すとかそういうことじゃないけれども、何か持ち歩く習慣になっちゃったというところはありますよね。人に会うとその本をあげたりするので、また日本に帰ってきて買ったり(笑)。

――下川さんならではの電子書籍の活用法などはございますか?


下川裕治氏: その種のタブレットを持っていきませんので、実際電子書籍で本を読むということは今のところないんですが、やっぱり本を読むんだったら便利でしょうね。

――電子書籍は使われないということなんですが、逆に紙の本の良さっていうのは何かありますか?




下川裕治氏: いや、同じでしょう。同じだと思いますよ。最近荷物が重くって(笑)。要するにパソコンもあるし、電子書籍はスマートフォンとかそういうので見ればいいかもしれないけど、僕の場合突然ゲラを見ろとかそういうのが来る。そういうのがPDFで来たりするので、やっぱりパソコンを持っていかないとダメなんですよね。そうするとその周辺機器がどんどん増えていく。荷物がどんどん重くなっていくので、紙と電子、どちらが軽量かということが僕の選択肢でしょうね。 

海外で日本の日常から離れるためには


――普段のお荷物ってどんな感じなのですか?


下川裕治氏: 手持ちのバッグにパソコンを入れて、ザックというほど大きくないけれども肩に掛けられるようなもの、この2つだけですね。このスタイルというのは昔から今まであまり変わらないですね。

――基本は現地調達でしょうか?


下川裕治氏: 今はもうほとんど困らない国が多いので、特にこれを持っていかなきゃみたいなものはないですね。でもパソコン関係の物は持っていかなきゃいけないし、一番の悩みはプリンターですね。海外にもいっぱいプリンターはありますが日本語フォントが入っていないので、出力できない。だから「何日ごろ何か送るから返してくれ」というときは、日本人がいる街にいないといけない。超小型プリンターはないのかと思いますね、プリンターが重いんです(笑)。

――長年旅をされてきて、昔と今の旅行というと、どんなところが変わっていますか?


下川裕治氏: まずネットの繋がる環境を持っていないと飛行機のチケットを買えなくなってきたというところですね。LCCというのがあるでしょう? あれはお店を持たないので、ネットがつながらないとチケットが買えない。それで僕の旅はコースが日本で全部決まって出ていくわけじゃないので、現地へ行ってそこからどこかへという話になる。昔だったら旅行会社とか飛行機会社へ行ったり、列車にしてもそういう窓口があったけども、もうネット環境がないといけなくなってきましたね。

――現地の感覚で、「よし次はここへ行こう」とパッと飛び込んでという感じではない。


下川裕治氏: なくなってきましたね。やっぱり弊害を言えば、パソコンの画面を見た時、その途端にそこの周りが日本になっちゃうんですよね(笑)。例えば僕がマレーシアのマラッカに行くわけ。それで確かにまだ日本は平日なわけですよ。だから日本の相手は僕がマラッカの夕日を見ながらビールを飲んでるなんてことは知らないからメールでもなんでも送ってくるんですね。僕は僕で、さてカメラマンと一緒にホテル泊まって海辺へ行こうというときに、ついつい自分の中でネットの繋がるホテルを選んじゃうんですね、「選ばなきゃいいものを」とか思いながらね(笑)。それでネット繋ぐのもタダだしということで繋げちゃうじゃないですか。ネットに繋ぐと情報が「ダダダダダー」って出てくるわけですよね。それで「んー」とか思って、やっぱり「プチン」と切る。その時ようやく日本と切れたって思う。昔は飛行機乗った途端に切れたんだけども、最近はやっぱりパソコン切った途端に切れるという感じになりましたよね(笑)。

ネットとの付き合い方をコントロールする


――旅に出ることはある意味非日常なのに、急に現実に引き戻されたようになるんでしょうか?


下川裕治氏: そういう意味では、ネットやパソコンっていうのは非常に強力な機械だと思いますよね。だからこそ便利は便利だし。こうやって僕が何回も海外に出られるというのは、ネットで繋がっているから仕事をそのまま海外でできるということは確かです。無い物ねだりで、それなのに海外にいると「日本にいるみたいだ」とぶつぶつ文句を言いながらやっているという現実はありますよね(笑)。

――本当に便利な半面、日本と同じ環境を持ってきちゃうというのはちょっともったいない気はしますね。旅をしているからこそネットとの付き合い方って考えさせられますよね。


下川裕治氏: 考えさせられますよね。僕はどちらかというと途上国・中進国といわれる国へ行くことが多いんだけど、そういう国のほうが日本よりもはるかに繋がるんです。要するに「飛び馬的進化」と言うんだけども、日本って有線でネットが繋がるみたいなものがまず広がって、そのうちに無線になっていったでしょ? 海外っていうのは有線を通り越してまず無線に入ってくる。無線LANでWi-Fiだみたいな話になってきて、それがどのゲストハウスだろうがどんな安いホテルだろうが当たり前みたいなことになってきてるところが多いんです。かえって日本のほうが通じない。いや、通じるところのインフラは日本はすごいけれども、例えば地方とか行って宿に泊まると「ここWi-Fiはつながらないの?」みたいな話になる。そういう意味で言うとヨーロッパとかアメリカも日本に似た傾向がある。その点、アジアは今、ネットが非常に通じますよね。特に、たまたまだけど台北なんかそういう街にしようとしてるでしょ? 街中どこでも無料で繋がる街を作ろうとしているわけだから。本当にすごいんですよ。あそこ、駅でも何でもネットが全部無料で繋がるんです。



――いつごろからそんな風になったのですか?


下川裕治氏: 台北市が全市内ほぼ完了と言ったのが去年じゃないですか? そうは言ってもまだ通じないところもいっぱいありますけれども、まあとにかく駅などの主だったところにいると、路上だろうが何だろうが無料のWi-Fiが飛んでます。そういう街が実際出てきている。今アジアは本当にネットが繋がりますね。

著書一覧『 下川裕治

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