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中村航

Profile

1969年、岐阜県生まれ。芝浦工業大学工学部工業経営学科卒業。2002年に『リレキショ』(河出書房新社)で第39回文藝賞を受賞しデビュー。『夏休み』『ぐるぐるまわるすべり台』(文藝春秋)は芥川賞候補にもなり、後者では第26回野間文芸新人賞を受賞した。2005年発表の『100回泣くこと』はロングセラーとなり、映画化もされた。近著に『あなたがここにいて欲しい』『あのとき始まったことのすべて』(角川文庫)、『星に願いを、月に祈りを』(小学舘文庫)など。

Book Information

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小説など感情を伝えるものは紙、利便性を追求するものは電子、
と使い分けたい



中村航さんは芝浦工業大学工学部工業経営学科卒業後光学機器メーカーへ入社。2002年『リレキショ』で第39回文藝賞を受賞。2003年『夏休み』で第129回芥川賞候補。2004年『ぐるぐるまわるすべり台』で第26回野間文芸新人賞を受賞された新進気鋭の小説家です。独特の世界で読者を魅了する中村さんに、書き手として、読み手としての本とのかかわりをお伺いしました。

連載を同時並行することで、仕事で仕事を「リフレッシュ」する


――6月22日に、中村さんの小説『100回泣くこと』が映画化されます。早速ですが、近況をお伺いしたいと思います。


中村航氏: 最近は連載で小説を書くことが多く、日々なるべく淡々と書くようにしています。デビューして10年ですが、ようやく作家らしくなってきました。2年くらい前から並行して月刊連載を受けるようになって、書き下ろしではなく、同時に数本を書くスタイルになりました。

――書き下ろしと連載とでは、考え方は違うのでしょうか?


中村航氏: 『100回泣くこと』で言えば、1年半くらいあの小説にかかりきりになっていて、別のことをしていても、24時間そのことを考えているようなところがありました。今は、「今週はこの小説のことを考えて、次の週はこの小説のことを考えて」という感じ。作品によって気持ちの持っていき方や、書き方自体もそれぞれ違ってきます。
最後までプロットをきちんと作って、文章に落としていくような小説もあるし、毎月ライブのように書くものもあって、作品によって全然違っています。小説は、書いて直すことを繰り返していくのですが、作品を並行することによって前のことをいったん忘れられる。ずっと同じ小説にかかりきりになっていると、作品の文章を暗記するくらいになってしまいますので、忘れることによって、修正作業がより第三者的な目で見られるし、新鮮な気持ちでできる。

――あえて作品から離れることによって、冷静に見て書けるようになるんですね。


中村航氏: 昔は自分の小説を忘れるために、工夫が必要だった。今はいろいろ書いていて、それぞれ書くときの気持ちも違うから、またその作品に戻った時に「お、こんなことを書いているな」という新鮮な感じが楽しい。何十年も同じタイトルを連載されている漫画家さんとかは、本当にすごいと思う。

自分の小説で読者を鼓舞したい


――小説を書く時に、中村さんが大事にされていることはなんですか?


中村航氏: 読み終わった後、読む前よりも世界がクリアに見えたり、優しく見えたり、何か違う感覚を持ってくれること、読んだ人が鼓舞された気分になることを目指しています。そこまで大げさなことじゃなくても、小説の中に出てくる何かをしてみたくなる、出てくる音楽を聴きたい、食べ物を食べてみたい、ということは多いと思います。読者の方が、僕の小説を読んで自転車の修理を慌てて始めましたとか聞くと、ちょっと嬉しかったりする(笑)。『100回泣くこと』の中に、バイクのキャブレターの分解を詳細に書いていますが、キャブレターが恋愛小説に必要かと言ったら、そうではない。でもその行為に宿る神のような美しさには、命の美しさに通じるものがあって、そういうのを小説に活かしたい。
小説というのは、記憶などに基づいて読者の方が自分で描いた絵の中で、その小説の世界の旅をすることなので、心に強く残るものは、自分の何かと組み合わさっているからなのだと思います。小説は、ストーリーを読むものだという風に思われているところがありますが、単にストーリーを利用して、何かを伝えたり届けようとしているんじゃないかと思ったりします。

――そうなると読書は書き手と読者の世界観のせめぎ合いですね。


中村航氏: それで共鳴できたらすごくうれしいです。読書という行為はやっぱり1対1だと思うので読者の人と本当に握手できたらいいなという気持ちで書いています。

著書一覧『 中村航

この著者のタグ: 『装丁』 『書き方』 『小説』 『作品』 『感覚』 『ブックデザイン』

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