BOOKSCAN(ブックスキャン) 本・蔵書電子書籍化サービス - 大和印刷

世界中の本好きのために

牧田幸裕

Profile

1970年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、京都大学大学院経済学研究科修了。ハーバード大学経営大学院エグゼクティブ・プログラム(GCPCL)修了。アクセンチュア戦略グループなどを経て2003年日本IBMへ移籍。インダストリアル事業本部クライアント・パートナー。主にエレクトロニクス業界、消費財業界を担当。IBMでは4期連続最優秀インストラクター。2006年信州大学大学院 経済・社会政策科学研究科 助教授。07年より現職。2012年青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科 非常勤講師。最新刊は『得点力を鍛える』(東洋経済新報社)。

Book Information

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

iPad miniを使ってみて、電子書籍の可能性を感じた


――牧田さんの著書を電子化して、電子書籍で読まれているユーザーの方が増えてきているようなのですが、牧田さんご自身は電子書籍を利用されていますか?


牧田幸裕氏: 僕はいわゆる「レイトマジョリティ(世の中の普及状況を見て模倣的に採用するタイプの人)」というセグメントで、そういう新しいものになかなか手を出さないんです。だから今はiPad miniを持ってきたんですけれど、いわゆるiPhone、iPad系に手を出したのはこれが最初なんです。で、この数週間やってみて「すごいものがあるなあ」と思ってびっくりしたんですけれども。実際に手を出してみるとやはり便利ですよね、驚きました。

――どんなことにご活用されていますか?


牧田幸裕氏: 電子書籍自体はまだ手を出していないんですけれど、今『ブラックジャックによろしく』という漫画を無料で読んでいます。あとは、子ども向けにディズニーの『トイ・ストーリー』(英語)なんですけれど。タダでもらえるコンテンツだけれど面白いんですよ。しゃべりながらずーっと同じネタを繰り返し子どもに読んでやる、読み聞かせというのは大変なんですけれど、これは勝手に読んでくれるのでいいですね。こういうサービスはすごく便利だし、どんどん普及していくんだろうなと思います。



やはり電子書籍の可能性というのはすごくあって、電子書籍サービスの市場規模がエムエム総研のリサーチでは、2010年で640億円っていっているんですけれど、2015年に3500億円になるといっているんです。で、年平均の成長率が40%って、今の日本ではありえない感じなんですけれどもね。僕はもっと上振れして大成長するビジネスになるんじゃないかと思っています。

――可能性は大いにありますか?


牧田幸裕氏: あると思いますよ。こんな便利なものがあるって、まだみんながちゃんと認知していないだけだと思うので、認知したらあっという間にブレイクすると思います。

――電子書籍というのはどんな可能性が今後もあると思いますか?


牧田幸裕氏: これが差別化になるかどうかはわからないんですけれども、1ユーザーのニーズからいうと、僕は仕事柄ビジネス書を読むことが多くて、そういうときに例えば図表がパワーポイント形式でダウンロードできるだとか、もともとのエクセルのデータでダウンロードできるだとか。あとは参照している出典とかありますよね、そこをクリックしたらAmazonに飛んでそのチャプターだけを買えるだとか、そういうサービスがあるとうれしいし、それはどんどん出てくると思うんですけれどね。本も全部買えるけれども、章ごとにも買えますよというスタイルになっていくと思います。

バラで売られるようになっても、本の執筆スタイルは変わらない


――例えば、本というのは1つのパッケージなので章立てだとか色々あると思うのですけれども、書くときにそういったことも意識しての変化というのは起こりそうですか?


牧田幸裕氏: いろんな書き方があると思うんです。大テーマがあって、それを構成要素に分解していって、チャプターを作って個々のコンテンツを作ってという場合もあるでしょうし、いろんなバラのものを統合していって、最後に1つのパッケージになりますよというバ場合もあるわけですよね。だから、全体に価値があるんだったら、ある大テーマからブレイクダウンをしていってという形で作っていくでしょうし、電子書籍のようにバラ売りをということで考えるのであれば、パーツ、パーツを集めて1テーマでということになるでしょうね。でも後者のやり方って結構多くて、連載で何回かやってそれをまとめて本にするというパターンってよくあるじゃないですか。だから全く違和感がないと思います。「この本は○○の連載を大幅加筆・修正したものである」とかってよくあるじゃないですか。だから、そういう意味では意識はそんなに変わらないと思いますけれどもね。

日本人は、もっと世界レベルの競争力をつけよ


――今後、どんなことを世の中に伝えたいとお考えですか?


牧田幸裕氏: 一番は、「もっと僕たち日本人は競争力を高めなくてはいけない」ということです。これはビジネスでもプライベートでもそうなんですけれども、海外に目を向けると競争力が全然ないんですよ。この『得点力を鍛える』にも書いたんですけれど、アジアの子どもたちの努力は、もうハンパじゃないんです。それを知らないから「日本」という小さな枠組みの中で競争をして、それで「受験勉強が大変だ」とかっていっているんですけれども、海外に目を向けたら日本の受験なんてぬるすぎて、「こんなの勉強じゃない」みたいな感じなんですよね。

――そうなんですか。


牧田幸裕氏: なのでそういう世界をもっと知ってもらいたい、競争力を高めるための準備をしてもらいたいというのがあって、それは比較をしないとわからないんです。なので、僕はできる限り比較対象をたくさん出していって、皆さんに気づきを持っていただきたいです。ラーメン二郎の本を出したときもあえて狙っているところがあって、リッツカールトンと二郎を比較したり、メルセデスベンツと比較しているわけなんです、もうむちゃくちゃなんですけれども(笑)。

なぜそんなことをしているのかというと、比較の視点を持ってほしいからなんです。一見関係ないものだと思われても、ある視点を持てば比較ができる。なので、日本という枠組みだとか、電子書籍についてもそうなんですけれども、「紙媒体」という枠組みだけで考えるのではなくて、「コンテンツ」という枠組みで考えていって、その流通形態、配布形態としてどういうものがあるのかということを考えたら、当然電子媒体が入ってくる。なので、そういう枠組みを取っ払って自由な比較をして、頭を柔らかくして考えることができるようになりましょう、ひいては、競争力を高めるようにしていきましょうということです。



ちょうど今年、エレクトロニクス企業の体たらくというか、悲惨な状況がフォーカスされているんですけれど、あれもやはり枠組みのとらえ違いですよね。日本のマーケットが中途半端に大きいので、日本のマーケットを重視した。でも、日本のマーケットってこれからシュリンクしていくわけなんだから重視してはいけないわけであって、あくまでもグローバルの中での競争が80%ぐらいを占めなくてはいけない。誰と比べてあなたは強いのか、弱いのかという視点がないから、自分の強みや弱みがわからないんです。だから競争力を高めるためには、「誰と比べてあなたは強いんですか、弱いんですか」ということをちゃんと考えないといけない。そういう視点を提供できるようなコンテンツを、本や雑誌やウェブでも発信していきたいと思っています。

――牧田さんはなぜそのような広い視野が持てるようになったのでしょうか?


牧田幸裕氏: それは今申し上げた「比較対象」だと思うんですよね。僕は自分を成功者だと思っていなくて、例えば僕が大学入試で成功したとしても、京都大学のポジションってグローバルスタンダードでいうと毎年ずるずる落ちているわけです。これは東京大学も一緒でずるずる落ちている。だから日本という枠組みで考えれば「京都大学に合格しましたよ」っていいことなのかもしれないけれど、グローバルから見てみれば「落ち目の大学を卒業しましたね」ということになってしまう。なので、「これはまずいな」と思っちゃうわけですよね。それが「比較対象」なんです。

だから今、新しくチャレンジしているのは、「自分のライバルを自分の同業者だけで見ちゃだめだぞ」ということを考えています。それはこういう出版業界とかもそうですよね。同じ紙媒体のライバルだけで争うのではなくて、いろんな黒船がやってくるわけだから、その黒船を早く発見しなくてはいけない。教育もそうです。あと4、5年たったら東京大学が秋入学をやりますが、そうしたらアジアから頭のいい学生がどんどんやってくるので、日本の高校生は離されてしまいます。日本の高校生は高校生で、頭のいい人たちは東大や京大を選ばないで、海外の大学にダイレクトに行くようになる。例えていうと、昔の野球少年って、頂点は巨人を筆頭とする日本のプロ野球だったわけです。

でも、今は大リーグにいきなり行こうとする人たちがいる。それと全く同じ世界にグッと変わりますよね。野球選手もそうだし、開成や灘の高校生もそうですけれど、東大や京大を頂点と見ていないですよ。

――そんな時代になってきますか。


牧田幸裕氏: もうあと5年、10年でなると思いますよ。そういう未来を見据えると、やはり取らなくちゃいけないアクションは変わってくると思いますよね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 牧田幸裕

この著者のタグ: 『大学教授』 『コンサルタント』 『映画』 『可能性』 『投資』 『子ども』 『子育て』 『コンテンツ』 『価値』 『理解』 『愚直』 『イシュー』 『クオリティ』

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
著者インタビュー一覧へ戻る 著者インタビューのリクエストはこちらから
Prev Next
ページトップに戻る