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世界中の本好きのために

加藤昌治

Profile

1994年、大手広告会社入社。情報環境の改善を通じてクライアントのブランド価値を高めることをミッションとし、マーケティングとマネジメントの両面から課題解決を実現する情報戦略・企画の立案、実施を担当した。情報戦略の企画実施業務を行う傍ら執筆した『考具』(阪急コミュニケーションズ)がベストセラーになる。著書に『アイデア会議』(大和書房 2006年)、『アイデアパーソン入門』(講談社BIZ 2009年)などがある。

Book Information

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紙と電子の読書は別のもの。『電子書籍』という新しいスポーツをプレーせよ



大手広告会社に勤務しながら、自らのアイデア発想法を『考具』として発表し、ベストセラー作家の仲間入りをされた加藤昌治さん。本業のかたわら、ワークショップや執筆活動を精力的にされている加藤さんに、読書と電子書籍についての考え方や、アイデア発想法の極意などをお伺いしました。

本を読んで欲しくなった『男性用ハイヒール』


――最近読んで面白かった本を教えていただけますか?


加藤昌治氏: 最近だと、個人的には『ハイヒール・マジック』(マダム由美子著/講談社刊)
でしょうか。女性向けの本ですが「ハイヒールを履こう」と提案する本です。ハイヒールって、一般論的には身体的に良くないというイメージで語られている事が多い。「でも実はそんな事ないのよ」という内容になっています。いわゆるありがちな本だと、例えば「ハイヒールを履くとあなたの内面の良さがにじみ出てきますよ」みたいな説得の仕方をしたりする。でもそういう本ではないんです。著者の方は元々クラシックバレエをされていたようで、内容がとてもフィジカルなところにハマりました。
実際に身体を使ったり行動する事に興味があるので、『ハイヒール・マジック』を読んで「なるほど、そうなのか」と読み終わったら男性用ハイヒールが欲しくなりました(笑)。探せばあるんでしょうけれども。ピンヒールみたいなやつ、貸してって何人かの女性に言ってみましたが思い切り断られました。「壊れる」(笑)。

――『ハイヒール・マジック』を手に取られた、きっかけは何ですか?


加藤昌治氏: ここ2・3年ぐらいですかね、雑誌のスタイリストさんたちが執筆しているスタイリングの本というのが増えてきています。なぜかずっと追いかけているのですが、その流れで目に留まった1冊です。書店に入ると、美容やファッションのコーナーに「新着がないかな」と意識的に目を向けていて、一通りくまなくパトロール。もろ女性向けのコーナーに髭をはやしたオヤジがいると、かなりアヤシイです(笑)。

――書店にいらっしゃるのはどれぐらいの時間なのでしょうか?


加藤昌治氏: 15分から30分くらいです。品揃えは気になりますね。書店のカラーが出てきて面白い。これだけ沢山の書籍があるから、全ての書籍を店頭には置ききれない。だからどの書籍を置くかは書店が編集した結果だと思うのですが、選ばれた品揃えが自分に合う合わないは別として、その『編集している意思』が分かりやすい書店は面白いですね。平均したら週に5回ぐらいは行ってるかな? でも1回あたりの時間は、ここのところ短いですね。

――何故スタイリストの本をチェックされているのでしょうか?


加藤昌治氏: ファッションとは、いわゆる感性のものだと捉えている方も多いでしょうし、一般的にもそう言われていますよね。でも僕は「先天的なセンス」ではなくて、「誰にでもある程度学習できるもの」、ルールがあるものではないかと思っているんです。スタイリストはすでに存在するアイテムを組み合わせる事が多い仕事で、いわば編集の仕事に近い。洋服や小物の組み合わせ方や、モデル体型ではない人の身体にどのように合わせるか。「スタイリング」、つまり「身体的な知」を本の中でどうやって説明しているのかに関心があったので、追うようになった経緯です。
 

読書家だった少年時代。『真田十勇士』に傾倒して大けがもした


――電子書籍と、紙の書籍とで読書の割合はどのくらいでしょうか?


加藤昌治氏: 90%以上は紙でできた本ですね。

――ネット書店でも本は購入されますか?


加藤昌治氏: はい。1冊欲しい本があって、リアル書店に探しに行った時になかなか出会えない事もあるので、そういう時にはネット書店が便利でよくお世話になってます。
自分にとって「おお」と思う本と偶然に出会う確率は、リアル書店の方が高いと思います。単純に時間あたりに目にする冊数が圧倒的に多い。ネット上の電子書店でも、ある程度は並んでいますけれども、画面の中に数冊と視界に数百冊入るのでは違いますから。でもネット書店にあるリコメンドには、しばしば“やられて”ますから・・・本との出会いという意味では、両者のタイプが違うのかなと。

――加藤さんの人生において影響を受けたという本を教えていただけますか?


加藤昌治氏: その昔、講談社少年文庫に『真田十勇士』と題したシリーズが3冊あって、『真田十勇士・猿飛佐助』『真田十勇士・霧隠才蔵』『真田幸村』(絶版)。これと岩波書店から出ている児童文学の『ゆかいなホーマーくん』。この4作には影響を受けました。100回は読んでます。ありがたいことに父親がとても本好きで、家の中に色々、本が転がっていたんです。本に関しては、欲しいと言った時にそれほどダメ出しをされなかった環境もありまして、比較的読んでいた方じゃないかと。とても両親に感謝しています。

――これらの本はいくつぐらいの時に読まれたんですか?


加藤昌治氏: 『真田十勇士』シリーズは小学1年生くらいですね。『ゆかいなホーマーくん』は3、4年生ぐらいかな。『真田十勇士』は講談を聞いているような面白さ。確か総ルビで、子どもでも読む事ができた。『真田十勇士』って豊臣家に対する忠義云々のお話。徳川家康のことを「徳川の古だぬき』って書いてあったせいか、僕の中にも徳川家康的なものに対する反発心がすごく養われてしまいました(笑)。小学3年から4年に上がる春休み、祖母の家へ遊びに行った際、近くのお城へ行こうとなったのですが、その城がたまたま『真田十勇士』に出てくる敵の武将の城だったんですね。真田かぶれの僕はその城に行くのがおっくうで、「嫌だ嫌だ」って言っていたら坂から落っこちて、足にグサッと木が刺さって大騒ぎになっちゃったことがありました。

紙の本と電子書籍の読書と言うものは、別の『行動』だと思う


――紙の本で沢山読書をされていますが、電子書籍というのは、何か読書家にとっての助けになりそうでしょうか?


加藤昌治氏: 電子書籍の場合は接触環境が大分変わってしまうので、「読書する」の意味自体が大きく変わるんだろうなという気がします。私見ですが、電子書籍上を読むことは今までの読書と違う行動を指すことになるんじゃないでしょうか。僕らはそれに慣れていないだけであって、今の子どもたちにとってそれが普通ならば、別に良い悪いではなく。

――紙の本は、残ってほしいというご希望はありますか?


加藤昌治氏: 無くなりはしないでしょう。本をめくる行動による読書と、デバイス的なもので横にスライドさせたりする読書では、体験の種類が違うので得られるものも変わると思います。それがどう変わっていくのかは自分でも分からないですが。紙と電子書籍は別のものと考えた方がいいんじゃないでしょうか。

――加藤さんご自身は、電子書籍は普段ご利用になっていますか?


加藤昌治氏: いまのところはスマートフォンですね。電子書籍を読むのは、主に移動中。ジャンルはエッセイやビジネス書。実際の書籍に比べると画面が小さいこともあって、内容によって選んでいますね。

――これからの本の未来はどのようになると予想されますか?




加藤昌治氏: (インタビュアーに向かって)例えば今、デバイスを見ていて頭の向き、角度が変わりましたよね。そういう身体的な感覚の違いが結構大きいんじゃないかなと感じています。例えば「小学一年生と同じような背の高さにしゃがんでみる」ように。40歳を過ぎている大人には、どこまでいってもリアルな一年生の気持ちになんてなれない。でもそこになるべく近づくために、頭の中だけで考えるのではなく、物理的な環境を整えてみる。どこまでいっても間接的な体験に変わりありませんが、リアルにできるだけ近づく努力は必要だと思いますね。この「リアルに近づく努力」、昔からさまざまな言い方で勧められています。「現場に行け」とか、「頭だけで考えるな。手で考えろ」とかいろんな言い方がありますが、伝えたいことは同じじゃないでしょうか。

――ご自身の著作物を、ユーザーがデバイスで持ち歩いて読みたいと思われる事に対して、何か心理的抵抗はありますか?


加藤昌治氏: 豪華な装丁や、デザインがカバーと一体となって入っている本など、紙を使って製本されたことにものすごく重心が置かれているような「ブツとしてスゴイ」本もあります。そういう本は、紙で読んだ方がいいと思いますね。作り手としては、同じ原稿なんだけれどもタブレットで読む時は違うデザインにするとか、用途によって編集しなおせばいいのでは。紙をそっくりそのままコピー&ペーストした電子書籍だけがイコール「電子書籍化」でもないよねと思います。

著書一覧『 加藤昌治

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